【職種一覧】「技術・人文知識・国際業務」の要件、不許可事例を徹底解説
就労ビザの代表格「技術・人文知識・国際業務(ギジンコク・技人国)」について解説します。
「技術・人文知識・国際業務」の要件、申請条件や許可が下りるまでの期間、雇用の際の在留カードのチェック方法、不許可事例などの注意すべきポイントまで、採用担当者必見の内容です。
目次
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在留資格「技術・人文知識・国際業務(技人国)」とは
「技術・人文知識・国際業務」とは、海外の「ワーキングビザ」に相当する在留資格(ビサ)のことです。
外国人材が来日して働くことで、外国人労働者が保有している専門的な知識や技術を日本へ還元することが目的の在留資格です。自然科学や人文科学などの専門知識や、外国の文化についての知識が必要な業務をおこなうための在留資格です。
「技術・人文知識・国在業務」は名称が長いので、通称で「技人国(ギジンコク)」ビザと呼ばれています。
特定技能のような人手不足を解消することを目的とした在留資格ではありません。
「技術・人文知識・国際業務」でできる業務とは
「技術・人文知識・国際業務(技人国)」では、外国人がこれまで学んできた知識や仕事で培ってきた経験、母国の文化や言語に関する知識と関連性のある業務であれば従事することが可能です。専門知識を必要としない業務や、外国人本人の学歴・職歴や文化などと関連しない業務の場合、「技術・人文知識・国際業務」には当てはまりません。
ただし、就労制限(従事できない業務)もありますので、具体的にどのような職種であれば就労可能なのかは後述します。
出入国在留管理庁では、以下のように定義しています。
「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学,工学その他の自然科学の分野若しくは法律学,経済学,社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動」
(出典:技術・人文知識・国際業務|出入国在留管理庁)
「技術・人文・国際業務」で認められる職種一覧
では具体的にどんな職種に就くことができるのか、職業名を挙げてみていきましょう。
技術
機械工学の技術者、システムエンジニア、プログラマー、情報セキュリティーの技術者、など
人文知識
企画、営業、経理、人事、法務、総務、コンサルティング、広報、マーケティング、商品開発、など
国際業務
通訳、翻訳、デザイナー、貿易、語学学校などの語学講師、通訳が主業務のホテルマン、など
ただし、上記の職種であれば在留資格を取得できるというわけではありません。外国人本人のこれまでの経歴と、これから就く業務との関連性があるかどうかが最も重要なポイントとなります。これらのポイントが押さえられていないと、申請が不許可になる可能性が高いでしょう。
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「技術・人文知識・国際業務」を申請するための要件
「技術・人文知識・国際業務(技人国)」を申請するためには、学歴などの条件が必要で、満たしていない場合は不許可となります。
要件を詳しく見ていきましょう。
学歴(職歴)と業務内容の関連性がある
外国人本人の専門的な知識やスキル、感受性を活かせる業務内容ではない場合は、基本的に「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は取得できません。
学歴は海外か日本の大学卒業、もしくは日本の専門学校卒業以上
海外の大学卒の場合は「日本の大学卒に相当する」ということを証明する必要があり、海外の専門学校卒では、学歴の条件は満たせません。必要となる学歴を満たせない場合、「技術」「人文知識」では実務経験(職歴)10年以上、「国際業務」の場合は3年以上あることで条件を満たすことができます。
企業の経営状態が良好
受け入れ企業の経営状態が安定しているかどうか、審査されます。
給与の水準が日本人と同等かそれ以上
同一労働同一賃金が適用されます。外国人写真の給与が、同様業務を行う日本人社員と同等かそれ以上の給与条件でなければなりません
これは在留資格や国籍に関係なく、日本に在留する外国人も適用される法律です。
不許可になりやすい要件なので、正しく理解しておくと良いでしょう。詳細については以下の記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
「技術・人文知識・国際業務」の申請方法
「技術・人文知識・国際業務(技人国)」は、以下の流れで申請します。
海外から直接採用し日本に呼び寄せる場合
- 企業が外国人と雇用契約を締結する
- 企業が「在留資格認定証明書交付申請」をおこなう
- 「在留資格認定証明書」を外国人本人に送付する
- 外国人本人が日本大使館に査証(ビザ)を申請する
- 来日・就労開始
日本にいる外国人を採用する場合(留学生などの場合)
- 企業が外国人と雇用契約を締結する
- 外国人が「在留資格変更許可申請」をおこなう
- 就労開始
日本国内の他社で働いていた外国人を採用する場合
- 企業が外国人と雇用契約を締結する
- 外国人が「就労資格証明書交付申請」を行う
- 在留資格を変更することなく、新しい仕事ができることを確認(もし在留資格を変更しなければならない場合は、外国人が「在留資格変更許可申請」を行う)
- 就労開始
詳しい申請フローや、手続きに必要な書類については、過去の記事で解説しているので、こちらでご確認ください。
申請から許可までには30日以上かかることがある
外国人を海外から呼び寄せて採用する場合は、「在留資格認定証明書交付申請」という手続きを行います。留学生の在留資格を変更して採用する場合は、「在留資格変更許可申請」という手続きが必要です。
「在留資格認定証明書交付申請」は、大体40日弱程度、在留資格変更許可申請は40日から50日程度かかります。また、申請の前段階(書類作成や添付書類の収集)には、60〜120日程度がかかります。
これら2つの詳しい処理期間については別記事で解説しましたので、参照してください。
採用する際に注意すべきポイント
「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の外国人を採用し、働いてもらう上で注意すべき点をご紹介します。
副業アルバイトには資格外活動許可が必要な場合も
社内規定でアルバイトが許容されていることが前提になりますが、アルバイトをすることも可能です。アルバイトの内容は、「技術・人文知識・国際業務」で許可されたものでなければなりません。アルバイトをする場合は「資格外活動許可」が必要です。
また、副業として自営をすることはできません。自分でビジネスを始めて収入を得ることは、「技術・人文知識・国際業務」で認められた活動の範囲外と考えられます。
社内の異動に伴う業務変更に注意
社内の異動に伴って業務内容を変更する場合には、「異動後の業務内容が在留資格にあっているかどうか」に十分な注意が必要です。
単純労働にあたる場合はもちろん不可能ですが、技術・人文知識・国際業務の資格の中での変更についてはケースバイケースとなるため、念のため出入国在留管理庁に確認しましょう。
一例として、システムエンジニアから、海外向けの営業に配置換えをした場合を考えてみます。この場合、在留期間の更新を申請するときに、改めて業務内容と、本人の職歴や実務経験が関連しているかどうかを審査されることになります。海外向けの営業に必要な能力が認められない場合は、不許可になることがあります。
実務経験と業務の関連性が薄い場合など、ケースによっては不許可になる可能性もあるので、不安な場合は、異動させる前に専門の行政書士に相談することをおすすめします。
更新時期に注意
次の在留期間更新申請がいつなのか、企業側も把握しておくことが重要です。「技術・人文知識・国際業務」の在留期間は、3カ月、1年、3年、5年ですが、初めて申請するタイミングでは1年更新となる場合が多いです。
万が一期限を超えて在留してしまうと、不法滞在になってしまい、不法滞在の外国人を雇用していると、企業も「不法就労助長罪」に問われる可能性があります。
詳しくは過去記事を参照してください。
更新の手続きについては以下を参照してください。
「技術・人文知識・国際業務」では単純労働はできない
「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の外国人には、原則としてそのような単純労働をさせることができません。
単純労働は、専門知識を必要としない業務です。「技術・人文知識・国際業務」は、専門知識を必要とする業務に就くための在留資格であるため、単純労働をおこなうことは認められていないのです。例えば、工場でのライン作業や飲食店での接客作業、ホテルであればベッドメイキングなどは単純労働にあたります。入社後の新人研修の一環として単純労働が含まれている場合でも、事前に出入国在留管理庁に相談しておいた方が良いでしょう。
業務によっては在留資格「特定技能」が適している場合も……
もし、単純労働を含む業務を外国人に担当させたいのであれば、在留資格「特定技能」が適している場合もあります。特定技能は、「技術・人文知識・国際業務」よりも対応できる業務が幅広く、大学卒業などの学歴の条件もないため、採用の門戸を広げやすいことが特徴です。試験に合格する必要はありますが、任せたい業務内容によっては、「特定技能」を検討してみるのも一つの方法です。
特定技能について、詳しくは過去の記事をご覧ください。
学歴(職歴)と業務との関連性が必要
「技術・人文知識・国際業務(技人国)」ビザで外国人に働いてもらう場合、学歴(職歴)と業務の関連性が最重要です。
大学で情報科学を専攻したのでシステムエンジニアとして働く、大学で法律学を学んだので日本の法律事務所に就職し弁護士の補助職員として働く、というように大学(あるいは日本の専門学校)で勉強したことと、業務内容が関係していなければいけません。
例えば、国内在住の留学生をご紹介し、内定後に在留資格変更のサポートを行い「技術・人文知識・国際業務」の外国人材として貴社へ入社といったフローとなります。
詳しくは以下の資料請求、またはお問い合わせ窓口からご連絡ください。
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許可事例
「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の申請の許可事例をご紹介します。
携帯ショップの販売員
業務内容:翻訳・通訳。在留外国人に向けた携帯電話の販売業務
学歴:大学・日本語学部
日本語能力:JLPT N1
「外国人に向けての翻訳・通訳業務」「語学を活かした販売促進業務であること」「外国人の来店が多い」ことがポイントです。
九州地方の旅館の従業員
業務内容:国内外の旅行業者との折衝やフロント業務、通訳業
学歴:大学・日本語学科
日本語能力:JLPT N2
日本語能力の高さと、業務を行う施設の外国人利用数などがきちんと提示できる必要があります。
単純労働としての雇用は不許可になります。あくまでも、外国人に対して通訳等を行う業務のために雇用するということが証明できるが重要です。
不許可事例
「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の申請で、不許可になった事例をご紹介します。
【不許可事例1】
教育学部を卒業した者から,弁当の製造・販売業務を行っている企業との契約に基づき現場作業員として採用され,弁当加工工場において弁当の箱詰め作業に従事するとして申請があったが,当該業務は人文科学の分野に属する知識を必要とするものとは認められず,「技術・人文知識・国際業務」の該当性が認められないため不許可となったもの。
法務省|留学生の在留資格「技術・人文知識・国際業務」への変更許可のガイドライン
上記は、学籍と業務の関連性が認められないことで不許可になった事例です。また、業務内容も、単純労働で専門性を必要としないという判断です。このような場合は、「特定技能」などの在留資格を取得するのが良いでしょう。
【不許可事例2】
日中通訳翻訳学科を卒業した者から,輸出入業を営む企業との雇用契約に基づき,月額17万円の報酬を受けて,海外企業との契約書類の翻訳業務及び商談時の通訳に従事するとして申請があったが,申請人と同時に採用され,同種の業務に従事する新卒の日本人の報酬が月額20万円であることが判明したため,日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けているとはいえないことから不許可となったもの。
法務省|留学生の在留資格「技術・人文知識・国際業務」への変更許可のガイドライン
上記は、日本人と同等の業務に従事するにも関わらず、同等額以上の報酬ではないことから不許可となった事例です。これは、先ほど「要件」で述べた通り、「日本人と同等かそれ以上の給与であることが必要」なためです。これは、「同一労働同一賃金制度」にあたります。外国人だからと言って、不当に安い賃金で働かせることはできません。
【不許可事例3】
専門学校における出席率が70%である者について,出席率の低さについて理由を求めたところ,病気による欠席であるとの説明がなされたが,学校の欠席期間に資格外活動に従事していたことが判明し,不許可となったもの
法務省|留学生の在留資格「技術・人文知識・国際業務」への変更許可のガイドライン
上記は、滞在状況が悪いとの理由で不許可になった事例です。学生の出席率の低さが指摘されています。また、欠席期間中に認められていない活動(資格外活動)をしたことが違法にあたるので、こちらも不許可の理由です。
在留資格「留学」の場合、アルバイトは1週間28時間以内と定められています。これをオーバーして働いたことで不許可になる事例は、よく見受けられます。学生自身が何時間働いたかを忘れてしまっていることも少なくないため、後から発覚する場合があり、注意が必要です。
不許可になってしまったときの対応
採用選考の過程で、不許可にならないよう業務の関連性などを確認することはもちろんですが、それでも不許可になってしまった場合は、入管に不許可の理由を確認して対処をしましょう。そのうえで、別の在留資格を取得したり、過去の職務履歴などから業務の関連性を立証することで、許可が下りる場合もあります。ただ外国人採用の経験が少ないと、自社で対処することは難しいかもしれません。再度不許可になると、さらに時間をロスしてしまいます。お困りの際は、人材紹介会社や行政書士に相談することがお勧めです。
在留資格申請の際は、業務との関連性が重要
今回は、「技術・人文知識・国際業務(技人国)」でできる業務とできない業務について紹介しました。また、申請する条件と、申請方法についても説明しました。
「技術・人文知識・国際業務」は、在留期間の更新回数の制限がなく、家族の帯同もできるため、求職者にとって人気の在留資格です。
しかし、年々審査が厳しくなっており、以前であれば許可がおりたケースであっても、現在は不許可となることもあります。新たな在留資格ができたことの影響もあるかもしれません。中でも、「技術・人文知識・国際業務」は、外国人本人の学歴(もしくは職歴)と、業務との関連性が重要視され、認められない場合は不許可になる事例が多数みられます。
自社では関連性があると思っていても、出入国在留管理庁は関連性がないと判断されることもあり、できるだけ、客観的に関連性を証明する必要があります。出入国在留管理庁の見解と違う見解で書類を作成すると、不許可になる可能性が高くなるでしょう。
自分がどう思うのかという点よりも、毎日様々な申請を取り扱う出入国在留管理庁の職員が読んだときに、「なるほど、学歴と業務内容との関連は確かにある」と納得できるような内容の書類作成が大事です。
不安な場合は、在留資格に詳しい行政書士か、出入国在留管理局に問い合わせることをおすすめします。