特定技能とはどんな在留資格?制度や技能実習との違い、採用方法をわかりやすく解説
「特定技能」とは2019年に創設された、人手不足とされる12の分野で外国人が就労が可能な在留資格のことを言います。特定技能外国人とはその在留資格を持っている外国人のことです。1号と2号があり、2号については対象分野の拡大が審議されるなど今もっとも注目度が高い就労ビザです。
制度の仕組みや取得の要件、就労できる職業や永住権などについて、行政書士がわかりやすく解説します。
目次
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新在留資格「特定技能」とは
「特定技能」とは、2019年4月に創設された、日本国内で人手不足が深刻とされている特定産業分野(12分野14業種)において、即戦力となる外国人材の就労が可能になった在留資格です。
在留資格「特定技能」には、「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があり、1号は12分野(旧14分野)、2号は介護分野を除く11分野が指定されています。
分野や業種についてはこの後、詳しく解説します。「特定技能」は特別な育成などを受けなくても即戦力として一定の業務をこなせる水準であることが求められます。
そもそも在留資格とは何かを知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
特定技能1号
「特定技能1号」は「特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」とされています。このレベルは基本的には試験によってはかられます。
対象は12分野で、在留期間の上限が「5年」となっており、別の在留資格へ変更しない限りは帰国が必要です。
特定技能2号
「特定技能2号」は「特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。2019年創設時点の際は「建設業」「造船・船舶工業」の2分野のみでしたが、2023年から介護の除く11分野への拡大が決定しました。2023年秋に試験も予定されています。
「特定技能」1号では在留期間の上限が「5年」なのに対し、「特定技能」2号の場合は上限がありません。また「特定技能」2号の場合は、要件を満たすことで家族帯同もできます。
特定技能1号と2号の違いについては、以下の記事で更に詳しく解説しています。併せて確認してみてください。
企業が「特定技能」外国人を採用するメリット
「特定技能」は外国人労働者が単純労働を含む幅広い業務に従事できることが最大のメリットです。いままで、単純労働に従事できる資格は永住者などの身分に基づいた在留資格のみだったため、人材の母数が多くはありませんでした。
また、「特定技能」は学歴や関連業務の従事経験を求められないため、外国人材側のハードルが低く、人材の出現率も高くなることが予想されます。
特定技能で就労可能な業種
「特定技能」の対象業種・は以下の12種です。これらは国内で充分な人材を確保できないとされ、特定産業分野に指定されています。
「農業」と「漁業」分野においてのみ、派遣での雇用が可能です。
※「特定技能」2号は介護分野以外で受け入れ可能
それぞれの職種の詳細は、以下の関連記事でも詳しく解説しています。
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「技能実習」と「特定技能」の違い
名前が似ているからか「特定技能」と間違われやすい制度に「技能実習」が挙げられます。認められる活動内容や、転職の有無など違いは様々ありますが、大きな違いは「技能実習」は人手不足を補うことが目的ではないということでしょう。
「技能実習」制度の目的は「技能移転による国際貢献」であり、技術を日本に学びに来ています。そのため技術を必要としない単純労働をすることは認められていません。母国へ帰ることが前提なので、家族帯同などもありません。
一方、「特定技能」は外国人を労働力として受け入れることが前提の在留資格ですので、単純労働が可能で、幅広く働くことができます。二つの違いを表に以下のまとめました。
【特定技能と技能実習の違い】
特定技能 | 技能実習 | |
目的 | 労働力の確保 | 技能移転による国際貢献 |
人数制限 | 建設・介護を除いて無し | あり |
永住権を とるための ルート | 特定技能1号→2号→永住者というルートで、 永住権の取得を目指すことが可能。 | 技能実習のままの場合は、 日本人の配偶者がない限り、不可能。 特定技能へ移行した場合は、 特定技能から永住権を取得可能。 |
外食分野への 従事 | 可 詳しくはこちら | 不可 |
転職 | 同一職種であれば転職が可能。 詳しくはこちら。 | 場合によって「転籍」が可能。 転職という概念はない。 |
家族の帯同 | 2号のみ可 | 不可 |
関与する 主体 | 外国人本人企業 ※登録支援機関への委託は必須ではない。 | 外国人本人(技能実習生)送り出し機関、 受け入れ先機関(企業)、 監理団体技能実習機構。 |
支援を行う 団体 | 登録支援機関 | 監理団体 |
1号特定技能外国人には企業の支援を行う義務がある
特定技能制度においては、外国人受入れを行う企業である「受入れ機関(特定技能所属機関)」は、特定技能外国人に対して業務や日常生活を円滑に行えるように、「支援計画」を作成し 、支援を行うことが義務付けられています。
▶参考:法務省|在留資格「特定技能」に関する参考様式(新様式)1号特定技能外国人支援計画書
ちなみに、2号特定技能外国人への支援は義務ではありません。2号特定技能外国人は日本生活もある程度長くなり、日本語能力なども高くなっていることから支援はなくとも生活できる状態になっています。
この支援の実施については、登録支援機関に委託をする、または委託が必須となることがあります。
登録支援機関について
登録支援機関とは、「特定技能1号」の外国人を受け入れた企業(特定技能所属機関)から委託を受けて外国人の支援を行う、出入国管理局から認定を受けた機関のことです。受け入れ企業に代わって支援計画を作成するなど、頼りになる機関です。
「特定技能2号」は登録支援機関の支援対象外です。
「特定技能」の外国人を雇用する企業は、外国人を職場上、日常生活上、社会上において支援する必要がありますが、登録支援機関に委託することも可能です。すべて自社でまかなうことも可能ですが、通常業務と並行しての外国人支援は非常に大変です。
登録支援機関に支援を委託しなければならない場合
受け入れ企業内に2年間外国人の在籍がない場合は、自社で支援はできず、登録支援機関に委託しなければなりません。
また、登録支援機関の業務を一部だけ受け入れ企業側で実施することはできません。委託する場合は全委託となります。一部でも省こうとすると法令違反になるので注意しましょう。
マイナビグローバルでは登録支援までをサポートしながら特定技能外国人材のご紹介も可能です。お困りの際は、お問い合わせください。
また、登録支援機関に委託が必要かどうかについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
特定技能の要件
外国人材が在留資格「特定技能」を取得するためには、試験に合格するか、在留資格の移行が必要です。
①特定技能評価試験に合格する
在留資格「特定技能」を取得するために、日本語と技能水準を評価する試験の合格が必須です。業種ごとに試験内容、会場、日程などが異なります。なお、試験は国内だけではなく国外でも実施されています。
試験の実施・受験者数、合格者数の詳細については、関連記事『特定技能評価試験 実施状況・日程・申し込み先』をご覧ください。
②「技能実習2号」を修了し「特定技能1号」へ移行する
「技能実習」から「特定技能」へ在留資格を移行することができます。
「技能実習2号」を良好に修了または、「技能実習3号」の場合は実習計画を満了
「技能実習」での職種/作業内容と、「特定技能1号」の職種が一致
「技能実習2号を良好に修了」した場合、「技能実習」の職種・作業にかかわらず日本語試験が免除されます。
さらに、「特定技能で行う業務」と「技能実習2号の職種・作業」に関連性が認められる場合は、技能試験も免除されます。関連性がない場合は受験が必要です。
元の在留資格 | 移行先の在留資格 | 要件 |
技能実習1号 | 技能実習2号 | 技能評価試験に合格している |
技能実習2号 | 特定技能1号 または技能実習3号 | 良好に修了していることに加え、下記の要件を満たしていること。 特定技能1号の場合:関連性のある業務を行う場合は技能試験免除 技能実習3号へ移行の場合:1ヶ月以上1年未満の一時帰国と技能評価試験合格など |
技能実習3号 | 特定技能1号 | 技能実習計画を満了(満了見込み含む) |
移行の方法を更に詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。
特定技能評価試験の内容
「特定技能」の試験制度は、①各分野の業務に関連した技能の試験と、②日本語能力に関する試験という2本立ての試験制度になっています。
①各分野の業務に関連した技能の試験
即戦力として働くために必要な知識や経験、技術を持っているかどうかを確認する試験です。学科試験と技能試験が設けられている業種もあり、合格の難易度もさまざまです。
「介護」であれば厚生労働省、「建設」であれば国土交通省といったように、所轄省庁ごとに産業分野が異なっているため、最新情報や申し込み情報については注意が必要です。
②日本語能力試験 (JLPT)または、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT)
日本語能力試験は、「日本語能力試験(JLPT)」または「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT)」の2種類のうちいずれか1つを受検します。どちらを受験しても構いません。
「日本語能力試験(JLPT)」はN1~N5までの5段階のレベルに分かれており、特定技能の取得にはN4以上が必要です。
「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT)」は、「日本語能力試験」よりも実施頻度が高く、再度試験を受けたりするのにも便利です。総合得点は250点満点で、200点以上をとることで合格となります。CBT方式(パソコンやタブレットを使用する)なので、その場で判定結果が表示されます。
試験のサンプルなどは以下の記事でご覧ください。
短期滞在の在留資格でも受験可能
2020年4月1日以降に実施の国内試験からは、短期滞在の在留資格でも受験可能になりました。つまり、観光で日本に来た外国人が、気軽に在留資格を取得する選択肢があるということです。
企業が特定技能外国人を採用する3つ方法
「特定技能」の外国人を採用する主なパターンは、すでに日本国内にいる外国人の在留資格を「特定技能」へ切り替えるか、海外から外国人を呼んで「特定技能」の在留資格を取得してもらうことです。
「技能実習」から在留資格「特定技能」に移行
先述の通り、「技能実習」から在留資格「特定技能」への変更が可能なため、ステップアップをしたい技能実習生に移行手続きをさせることでできます。
また、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、異業種への転職も可能になりました。
在留資格「留学」から「特定技能」に切り替えて採用
在留資格「留学」の外国人を「特定技能」に切り替えて採用するパターンもあります。留学生は「技術・人文知識・国際業務」への変更を考える人が多いですが、取得には学歴などとの関連性を求められるため、難しい場合もあります。特定技能であれば、学歴などとの関連性は不要なので、取得のハードルが下がりおすすめです。
海外現地から外国人を採用
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、現在はこのパターンの採用は少ないですが、将来的に主流になっていくだろうと思われます。海外現地の人材を採用する場合、現地で試験が行われているか確認が必要です。
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特定技能の現状と課題
特定技能への切り替えが増加中
新型コロナウイルス感染拡大による水際対策により、日本国内外の渡航が制限されるようになりました。それにより、帰国できない実習生や実習期間を終えた実習生が、「特定技能」へ切り替えて在留を続けるという傾向が続きました。
また、新しい技能実習生が入国できなかった期間に、技能実習生に代わって「特定技能」外国人を採用し始めた企業も増加しました。
これは、「特定技能」の試験は日本国内で定期的に実施されているうえ、先述の通り技能実習生からの切り替えも可能なため、外国人材の入国がストップしているなかでも母数が増えていることがあげられます。今現在は、「特定技能」外国人を採用しやすい状況となっています。
現在は新規入国もできるようになりましたが、技能実習から特定技能への在留資格移行の流れは続いています。それだけ引き続き日本で働きたいと考えている外国人が増えているということでもあります。
費用面のハードル
「特定技能」外国人の雇用には、紹介料、登録支援機関へ払う支援の費用など、受け入れ費用がかかることで、外国人のサポート費用が高くついてしまうことがあります。これにより、資金力のない中小企業にとってハードルが高くなり、「特定技能」の採用が広がらないという一面があります。
登録支援機関への依頼などは条件次第では自社で行うことも可能です。各企業にあった方法で採用を検討できると良いでしょう。
まとめ
今回は、新しい在留資格である特定技能について説明しました。特定技能の大きな特徴は、原則認められてこなかった外国人労働者の単純労働を付随的に従事可能にしたことです。新しく特定技能という在留資格ができた背景には、日本における深刻な人手不足や、インバウンドへの対応の必要性があります。日本社会を維持していくために、外国人労働者の受け入れが進められているのです。自社で外国人を採用する際には、どの在留資格を取得するべきかをよく検討する必要があります。単純労働にも従事してほしい場合は、特定技能を検討しましょう。
ただし、特定技能を取得できる産業分野は限定されておりサポート体制も必須になります。登録支援機関をはじめ、民間企業でも外国人雇用に関連した様々なサービスが提供されているので、自社にあったサービスを利用しつつ、外国人労働者を受け入れていきましょう。
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